自己のために自動車を運行の用に供する者をいいます。運行供用者は、交通事故(人身事故)が発生した場合に、自賠責法3条の定める賠償責任を負うことになります。運行供用者責任の判断にあたっては、通説は①運行支配と②運行利益の帰属の有無によって判断されるとしています(最判昭和43・9・24裁判集民92号369頁)。
実務上は、運行供用者か否かが争われることはあまり多くありません。通常、所有者に対して運行供用者責任を問うことになりますが、所有者が免責されるのは極めて例外的な場合です。 運行供用者責任を追及する場合としては、直接の加害者に任意保険が付いていない場合や任意保険が付いていても免責事由に該当し、賠償金の回収が困難であることが見込まれる場合に、加害車両の所有者等に運行供用者の責任を問う場合があります。
<参照条文>
自動車損害賠償保障法3条本文
「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」
<参考判例>
1 最高裁昭和43年9月24日判決・判時539号40頁
車両の所有者が子どもで、その親が当該車両を借り受けて自己の営業に常時使用していた事案において「A(子ども)は右自動車の運行自体について直接の支配力を及ぼしえない関係にあった」「自賠法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、自動車の使用について支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味するから、Aは右にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」にあたらない」としました。
<コメント>
判例1では、運行供用者に該当するか否かについて、①運行支配と②運行利益の帰属する者とし、結論として、所有者の運行供用者責任が否定されていますが、通常、自己の自動車を貸与した所有者は「運行供用者」に該当することが多いと思われます。