今回は、飯塚市の弁護士が「利害関係人を含む裁判上の和解」について説明します。
裁判においては、判決になる前に、裁判官から和解の勧告が行われることがよくあります。
訴訟は、原告・被告といった紛争の当事者が、自己の権利利益を実現させるものであるため、多くの場合、原告と被告との間で、和解が成立させます。
しかしながら、まれに、第三者への権利利益も含めて和解を成立させることがあります。この場合の当事者以外に利害関係を有する第三者のことを、利害関係人といいます。
A車(Aが所有者・Cが運転者)とB車(Bが所有者・運転者)との物損交通事故において、AからBにのみ訴訟提起された損害賠償請求の事案を例に説明します。
この事案において、Bからの別訴がないまま、裁判官からの和解勧告により、AとBが、過失割合をA側:20・B側:80との内容で合意したとします。AとBとしては、早期解決のために、A車の運転者Cも含めて和解したいと考えます。この場合、Cは本件交通事故を起こした人物であるため、BはCに対して、2割分の損害賠償請求をすることができます。
そのため、Cは本件訴訟において、当事者AとB以外に利害関係を有するものであることから、利害関係人となります。
では、利害関係人が参加した場合の和解は、どのようになるのでしょうか。
上記交通事故の例の場合、以下の様な和解条項となります。(Aが原告、Bが被告、Cが利害関係人となります。)
1 原告、被告及び利害関係人は、本件事故の過失割合が利害関係人において2割、被告において8割であることを相互に確認する。
2 被告は、原告に対して、本件事故による損害賠償債務として、○○円の支払義務があることを認める。
3 被告は、原告に対し、前項の金員を、令和○年○月○日限り、下記口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は被告の負担とする。
(指定口座)
4 利害関係人は、被告に対して、本件事故による損害賠償債務として、○○円の支払義務があることを認める。
5 利害関係人は、被告に対し、前項の金員を、令和○年○月○日限り、下記口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は利害関係人の負担とする。
(指定口座)
6 原告、被告及び利害関係人は、この和解条項に定めるもののほかに何ら債権債務関係がないことを相互に確認する。
7 訴訟費用及び和解費用は、各自の負担とする。