子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判」についての解説です。

【子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判とは】

1 監護者とは

 親権という言葉は、日常生活においてもよく耳にする言葉かと思われます。

 この親権の中身としては、法律上、未成年の子どもの「財産管理権」と「身上監護権」とに分かれます。

 この内、身上監護権とは、未成年の子どもを監護・養育・教育する権利及び義務のことをいいます(民法820条)。具体的には、同じ住居で衣食住を共にしたりして、子どもを監督・扶養することです。

 そして、監護者とは、「身上監護権」を有する者のことをいい、実際に子どもと生活を共にする者のことをいいます。

2 子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判

(1)意義

 離婚を決意された方の中には、離婚が成立する前に、別居を開始する方がいます。そして、別居された方の中には、夫婦の一方に何も告げずに、子どもを連れて、別居を開始する方もいます。

 離婚においては、離婚原因、財産分与、親権者の指定等で揉め、離婚が成立するまでに、長期化する場合があります。別居している場合、子どもの監護を夫婦のどちらが行うか揉めることがあり、特に、上記のような、夫婦の一方に何も告げずに子どもを連れて行った場合には、紛争が激化することがあります。

 この様な、別居開始から離婚成立までの間、子の監護を誰が行うかで争いになった場合に使われるのが、子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判となります。

(2)子の監護者の指定の審判

 子の監護者の指定の審判とは、夫婦のどちらが子どもと共に暮らして世話をしていく監護者としてふさわしいかを、家庭裁判所に判断してもらう手続のことです(家事手続法150条以下)。

(3)子の引き渡しの審判

 また、裁判所の判断のもと、監護権者に指定されても、子どもと一緒に住んでいる者から、任意に子どもを引き渡してもらえない可能性があります。

 そのような事態に備えて、合わせて申し立てるものが、子の引き渡しの審判になります。

 子の引き渡しの審判とは、監護権者の指定があることを前提として子供の引き渡しを命ずる家庭裁判所の手続をいいます。

【子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判での判断】

1 判断の要素

 民法では、子の監護者の決定について、子の利益を最も優先して考慮することを要求しています(民法766条1項)。

 そして、考慮要素としては、以下の要素が考えられます。

 ①父母の状況として、従前の監護状況、現在の監護状況や父母の監護能力等(健康状況、経済状況、居住・教育環境、監護意欲や子への愛情の程度、監護補助者による援助の可能性等)

 ②子の状況として、子の年齢、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、父又は母との親和性、子の意思等

2 調査について

 考慮要素の調査については、家事事件手続法では、「家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。」としています(家事事件手続法65条)。

 なお、子の聴取については、子どもが15歳以上の場合は、必ず行わなければなりません(人事訴訟法32条4項、家事事件手続法152条2項)。

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