訴状・答弁書・判決の言葉の使い分け

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「訴状・答弁書・判決の言葉の使い分け」についての解説です。

【訴状・判決の言葉の使い分け】

1 訴状・判決の記載について

 民事訴訟法上、訴状には、請求の趣旨及び原因を記載しなければなりません(民事訴訟法133条2項2号)。

 この「請求の趣旨」とは、裁判所に求める判決の結論、つまり判決主文と同じ記載になります。

 判決主文には、裁判所の判断の結論を簡明に記載するのみで、余分なものは一切記載しません。そのため、請求の趣旨も同様に、裁判所に求める結論のみ記載し、余分なものは一切記載しません。例えば、交通事故における損害賠償請求訴訟の場合、この請求の趣旨には、「被告に過失があるので~」との記載はせず、単に「被告は、原告に対し、100万円を支払え」といったものになります。

2 特異な記載について

 訴状や判決主文において、「被告らは、原告に対し、各自100万円を支払え」や「被告らは、原告に対し、連帯して100万円を支払え。」といった記載をすることがあります。

 この「各自」や「連帯して」とはどういう意味なのかと思う方もいるかと思います。

 「各自」とは、日常で使うときは、それぞれが100万円を支払うという意味でとらえられるので、原告は、合計200万円の支払いを受けることを意味します。

 しかし、判決や訴状においては、①それぞれ独立に偶々金額の一致した金額を支払う債務がある場合か②それぞれ支払う債務があり、債務と債務の関係が連帯債務等の関係である場合かのいずれかの意味になります。

 一方で、「連帯して」は、判決や訴状においては、②のみを意味します。

 なお、読んでいただいてわかるように、「各自」だとどっちの意味なのか分かり難いと思います。ですので、最近は、判決や訴状において、②の意味である場合には、「連帯して」の言葉を使う傾向にあります。

【答弁書での言葉の使い分け】

 訴状に対しては、反論の書面として、答弁書を作成して、裁判所に提出します。

 この答弁書には、請求の趣旨に対する答弁として、被告が求める判決の主文にあたる内容を記載します。上記の通り、判決の主文は、結論を簡明に記載するので、請求の趣旨に対する答弁は、「原告の請求を棄却する」といった記載をすることになります。

 請求の趣旨に対する答弁においては、「原告らの請求をいずれも棄却する」と少し変わった記載をすることがあります。

 この「原告ら」や「いずれも」の使い分けですが、原告が複数の場合には「原告ら」と記載し、原告の請求が複数の場合には「いずれも」を入れて記載します。

 ですので、原告が複数人の場合には、請求も複数になりますので、「原告らの請求をいずれも棄却する」と記載することになります。

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