飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「被告が裁判に欠席した場合」についての解説です。
【被告が裁判に欠席した場合】
訴訟が提起されると、裁判所は第1回期日を指定して被告に知らせることになります。もっとも、第1回期日の指定の際に、裁判所は被告の都合を聞くことは通常ありませんので、被告が欠席することがよくあります。
仮に、被告が答弁書を提出せずに裁判に欠席した場合、擬制自白という制度があるゆえに、ほぼ自動的に原告の勝訴判決が言い渡されることになります。これが、いわゆる「欠席判決」と呼ばれるものです。
この点、擬制自白とは、当事者が口頭弁論において相手方が主張した事実を争うことを明らかにしない場合に、その事実を自白したものとみなす手続きです(民事訴訟法159条1項柱書)。
そして、訴訟上、自白が成立すると、自白が成立した事実は、証明を要せずに、そのまま判決の基礎となります(民事訴訟法179条)。
ですから、被告が、答弁書を出さず、口頭弁論に欠席すると、擬制自白が成立し、裁判所が、原告が主張した事実を基礎に判決が下されることになるのです。
【被告が欠席し続けたのに勝訴した珍しい裁判例】
被告が欠席したとしても、原告は主張立証責任を免れるわけではありませんから、原告側に適切な主張立証が求められることは言うまでもありません。
この点、大変古い裁判例になりますが、東京地裁昭和39年12月17日判決(判例タイムズ172号207頁)は、被告が答弁書を提出せずに欠席したにもかかわらず、第1審及び控訴審ともに原告の請求が棄却された珍しい裁判例です。
この事案は、キャバレーの経営者であった原告が、ホステスである被告との間で締結された保証契約(接待にあたった顧客の飲食代金についてはその責を負う)に基づいて、被告に対して、客の未払い代金の支払いを請求したというものです。ちなみに、控訴審なのに「地裁」になっているのは、第1審が簡易裁判所で行われたからです。
この事案で、裁判所は、「被控訴人(※被告)と客との間に何らかの特別な関係があって、そのために被控訴人が右のような一方的な不利益を忍んでもなお本件保証契約を結ぶに至ったというような特別な事情があり、従って被控訴人に保証債務を負わせても社会正義に反しないと認められるならば格別、そうでない限り」ホステスによる顧客債務の保証契約は、公序良俗に反して原則として無効であるとした上で、本件では、特段の事情について控訴人(※原告)の主張立証がないため、本件保証契約は無効であるとして、控訴人の控訴を棄却しています。
なお、最高裁昭和61年11月20日判決は、本件同様にホステスが顧客の債務の保証契約を店と締結していた事案において、保証契約が公序良俗に反しない事情があると認め、店側の請求を認めていますから、前記39年裁判例の事案も、原告側の主張立証によっては勝訴する可能性があったかもしれません。