今回は、飯塚市の弁護士が「遺言執行者」について説明します。
【遺言執行者とは】
遺言執行者とは、被相続人の最後の意思である遺言の内容を実現する者のことをいいます。
遺言執行者の存在は、遺言の効力に全く影響はありません。しかし、遺言の内容を確実に実現する点ではその役割は重要といえます。
【遺言執行者の指定・選任・就職について】
遺言執行者の指定は、遺言で行う必要があります(民法1006条1項)。
遺言執行者の指定を受けた者は、就職を承諾することによって、遺言執行者に就職します(民法1007条1項)。
一方で、就職することは任意であるため、遺言執行の指定を受けた者は、就職を辞任することもできますが、辞任する場合には、遅滞なく辞任する旨を相続人に通知しなければなりません(民法1007条3項)。
就職を拒絶された場合には、利害関係の請求により、家庭裁判所が、遺言執行者を選任することができます(民法1010条)。
また、遺言執行者の指定を受けた者が就職するか否かを明らかにしない場合、相続人やその他利害関係人は、遺言執行者の指定を受けた者に対して、相当の期間を定め、その期間内に就職を承諾するか否かを確答すべき旨を催告することができます。
そして、期間内に確答がなかったときは、就職を承諾したものとみなされます(民法1008条)。
【遺言執行者の就職後の義務】
この遺言執行者については、遺言を執行する上で、就職後に行う義務として、以下のような様々な義務を負っています。
1 任務の開始義務(民法1007条1項)
民法1007条1項には、『遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。』と規定されています。
そのため、遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行う義務を負っています。
2 通知義務(民法1007条2項)
民法1007条2項には、『遺言執行者は,その任務を開始した時は,遅滞なく,遺言の内容を相続人に通知しなければならない』と規定されています。
この規定は、令和2年の民法改正により、当該義務が新たに設立されました。
そのため、遺言執行者は、就職後、相続人を確定するために、早急に戸籍を収集する必要があります。
3 財産目録の作成・交付義務(民法1011条)
民法1011条1項には、『遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。』と規定されています。
そのため、遺言執行者は、相続開始現在の財産の状況を記載した財産目録を作成し、相続人にその財産目録を交付する義務を負っています。
【義務を怠った場合】
遺言執行者は、相続人に対する善管注意義務(民法1012条2項・644条)を負っています。
そのため、遺言執行者が、上記義務を怠り、利益を受ける相続人等に何らか損害が発生した場合、遺言執行者は責任を問われる可能性があります。