養育費不払いの合意

 福岡県飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「養育費不払いの合意」の解説です。

 離婚する際に、離婚する相手と関係を完全に断ちたい等の理由から、父母間で、子の監護者から養育費を請求しないとの合意をすることがあります。

 子どもの立場からすると、親同士の合意に拘束されるのかとの疑問が生じると思います。

 養育費の不払いについて、札幌高等裁判所昭和43年12月19日決定(家庭裁判月報21巻4号139頁)は、「未成年者の扶養義務者である父母の間でその一方が他方に対し、養育費を請求しない旨の念書を差し入れたとしても、それが子の親権者として子を代理し、父に対して生ずる将来の扶養料請求権の放棄であれば民法881条によりその効力がないことは明らかであり、また、仮に前記母が負担する養育費を父に求償しないことを定めたにすぎないものであれば、右協議は両扶養義務者間でいわば債権的効力を持つにすぎないから、扶養権利者がその具体的必要に基づいて扶養料の請求をすることは何ら妨げられない」と判断しています。

 したがって、離婚をする際に、父母間で、子の監護権者から養育費の請求をしないと合意した場合、放棄の趣旨が、扶養料の放棄であれば当該放棄の合意は効力を持たず、養育費の放棄であれば、子が請求権者として、扶養料の請求を扶養義務者に対して行うことができることになります。

 では、扶養料とは何なのかと思う方もいるかと思います。

 この点、離婚後に、未成熟子の生活費等を請求する方法としては、①養育費(「子の監護に要する費用」)(民法7661項)と②扶養料(民法8771項)の請求があります。

 そして、養育費とは、未成熟子が社会人として独立自活できるまでに必要とされる費用をいいます。

 一方で、扶養料とは、一般的に、自分の資力・労力で生活することのできない者(扶養権利者)に対する援助として、一定の範囲にある親族から支払われる生活費等をいいます。親と未成熟子との関係であれば、未成熟子がこの扶養権利者にあたります。

 そのため、扶養料と養育費は、生活費という点では同じ内容となります。

 しかし、請求権者については、養育費と扶養料とでは違いがあります。

 養育費の請求は、未成熟子の監護者から未成熟子の非監護者に対する請求であることから、請求権者は監護権者である父母のどちらかになります。

 一方で、扶養料の請求は、未成熟子(扶養権利者)から扶養義務者に対する請求であることから、請求権者は未成熟子になります。

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