今回は、飯塚市の弁護士が「離縁」について説明したします
離縁とは、養子縁組の解消のことをいいます。
結婚したときに、配偶者の連れ子と養子縁組をしていた場合、離婚の際に、離縁が問題となることが少なくありません。
養子縁組は、離婚するからといって、当然に解消されるわけではなく、以下のいずれかの手続きによって解消されます。
【協議離縁】
協議離縁とは、当事者で話合い、合意のもとで離縁を行うものです(民法811条1項)。
合意は、養親と養子の間で行われますが、養子が15歳未満の場合には、離縁後に法定代理人になる人との間で合意を行います(民法811条2項)。
離縁の合意が行われた場合、必要な事項を記入して当事者の署名押印した「離縁届」を役場に提出します。なお、協議離縁の場合、裁判所の許可は不要です。
【調停離縁・審判】
調停離縁とは、第三者である調停委員を介して、裁判所で話合い、合意のもとで離縁を行うものです。
話合いで解決できないのであれば、すぐに訴訟となりそうですが、法律上の手続きにおいて、離縁訴訟を提訴する前に、調停を行わなければならないとされています(家事事件手続法257条1項、244条)。
調停が上手くいかず、調停が不成立になった場合、離縁を行うためには、離縁訴訟を提訴することになりますが、調停を不成立で終わらせる前に、家庭裁判所が、「調停に代わる審判」をしてくれる可能性があります(家事事件手続法284条)。
この調停に代わる審判とは、裁判所が離縁についての判断を行うというものです。
調停に代わる審判に対して、審判の告知を受けた日から2週間以内に、当事者がどちらも異議を申し立てなければ審判が確定します(家事事件手続法286条1項、2項、279条2項、3項)。
調停に代わる審判が確定した場合、審判は確定判決と同一の効力を有することになります(家事事件手続法287条)。一方で、2週間以内に、異議申立てが行われると調停に代わる審判は効力を失います(家事事件手続法286条5項)。
【離縁訴訟】
離縁調停で、話がまとまらなかった場合には、家庭裁判所に離縁訴訟を提訴しなければなりません。
離縁訴訟は、離縁の理由は何でもよいわけではなく、法律上、離縁が許される事由が以下のとおり、定められています(民法814条1項各号)。
①他の一方から悪意で遺棄されたとき(1号)
②他の一方から生死が3年以上明らかでないとき(2号)
③その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき
このうち、よく問題となるものは、『③のその他縁組を継続し難い重大な事由があるとき』です。
『縁組を継続し難い重大な事由』とは、養親子としての精神的、経済的生活関係を維持もしくは回復することが極めて困難なほどに縁組を破綻せしめる事由の存在する場合であり、これ以上縁組の継続を強制しても、正常な親子的社会関係の回復が期待できない場合とされています。
例としては、Ⅰ暴行・虐待・重大な侮辱、Ⅱ絶縁・長期の別居、Ⅲ家業の承継や金銭等をめぐる養親子の不和・対立、Ⅳ縁組当事者の一方の夫婦関係の破綻があげられます。
Ⅳについては、結婚相手の連れ子と養子縁組をした場合に問題となりますが、養子縁組が婚姻生活の円満を目的としてなされた場合などには『縁組を継続し難い重大な事由』が認められやすいです。
ただし、離婚が成立していれば必ず離縁の事由が認められるというわけではありません。