飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「離婚に伴う氏の変更」についての解説です。
離婚後の問題の1つとして、元配偶者や子どもの氏はどうなるかという問題があります。
氏とは、苗字のことをいいます。例えば、田中太郎であれば、田中の部分が氏にあたります。
氏の変更については、婚姻によって氏が変わった元配偶者の方、婚姻中の氏を長く使うことによりその氏が1つの名刺代わりになっている方などは、氏の変更は、重要な意味をもつことがあります。
また、子どもがいるご家庭では、子どもの氏の変更は、父母の関係の変化を示すことになるため、少なからず子どもの生活にも影響が生じます。
【離婚に伴う元配偶者の氏について】
元配偶者の氏は、離婚時に、婚姻前の氏に戻るのが原則です(民767条1項)。
一方で、元配偶者が、婚姻中の氏を使用する場合は、離婚日から3か月以内に市長村役場に離婚の際に称していた氏を称する届を提出する必要があります。
なお、3か月の期間中であれば、家庭裁判所の許可なく使用することができます(民法767条2項、戸籍法77条の2)。
ですが、3か月過ぎると、家庭裁判所から氏変更の許可を得た上で市町村役場に届け出る必要があります(戸籍法107条1項)。
そのため、子どもが成人するまでは、婚姻中の氏を使い続け、子が成人になったことに合わせて、元配偶者が氏の変更を行うこともできます。
【離婚に伴う子どもの氏について】
子の氏は、親の離婚により父母の氏が異なることとなっても変更はありません。
一方で、氏が変わる元配偶者が子の親権を有する場合、離婚により、子の氏を変えることが多いと思われますが、子の氏の変更には、家庭裁判所から氏の変更許可を得て、市町村役場に届け出る必要があります(民791条1項、戸籍98条1項)。
そして、子の氏の変更手続きは、子が15歳未満のときは法定代理人が行い(民法791条3項)、子が15歳以上のときは子自身が行うことになります。
なお、この手続きにより、氏を変更した未成年の子は、成人したときから1年以内に市町村役場に届け出をすることにより、家庭裁判所の許可を得ることなく従前の氏に戻ることができます(民791条4項、戸籍法99条1項)。
〇子どもの住所地が飯塚市の場合を例に挙げると、以下の流れになります。
1 福岡家庭裁判所飯塚支部に、子が(子が15歳未満なら法定代理人が)、氏変更の許可の申立てを行います。
2 申立てを受けた裁判所では、裁判官が審判を行います。そして、審判が終わると、申立人に対して、審判の結果が記載された審判書謄本が送られます。
なお、一般的には、申立てから審判結果の連絡がくるまで、1日から10日ほどかかります。この点、申立てたその日のうちに審判を行う即日審判を行うことで、期間を短縮することも可能です。ただし、即日審判は、行える時間帯が決まっているため、注意が必要です。
3 家庭裁判所から氏の変更が許可された場合、子は(子が15歳未満なら法定代理人が)、飯塚市役所に、入籍届を出して、戸籍の変更を行い、氏の変更が完了します。