飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「婚姻費用・養育費標準算定方の改訂」についての解説です
夫婦が別居・離婚した際に、一方が他方(親権者)に支払う婚姻費用や養育費の算定は、実務上、東京や大阪の裁判官の共同研究によって提唱された標準算定方式・算定表に基づいて行われます。
本来ならば、婚姻費用や養育費の算定には計算式があるのですが、その計算式は複雑なものなので、義務者が負担すべき婚姻費用や養育費が一見して分かる算定表が、現在では実務上活用されています。
ただし、この算定表に基づく婚姻費用や養育費の算定金額は、作成されてから15年程度が経過していることもあって、弁護士会が提言している金額と差があり、低額であると批判されていました。さらに、成人年齢の18歳への引き下げが予定されており、その影響との関係も整理する必要が生じていました。
そこで、令和元年12月23日に、標準算定方式・算定表の改訂が発表され、内容が変更されました。
たとえば、養育費の負担義務者が給与所得で年収500万円、養育費を受け取る権利者の年収が0円、子どもが1人で年齢が14歳以下のケースを考えてみます。旧基準を見ますと、義務者が負担する養育費は、4万円から6万円の間ということになっています。
他方で、改定後の基準ですと、義務者が負担する養育費は、6万円から8万円の間ということになっています。
このように、義務者が負担すべき婚姻費用・養育費の金額は、今回の改定によって全体的に上昇しています。
ただし、今回の改訂があったからといって、調停等で既に取り決められた婚姻費用や養育費の金額が自動的に上昇するわけではありません。婚姻費用や養育費の金額を変更するには、義務者との同意や、調停等の手続きを経る必要があります。
なお、今回の改訂に対して、一部の弁護士などからは、改定後の婚姻費用・養育費の金額でも不十分である、との指摘がされているようです。