婿と婿養子の違い ~マスオさんは?~

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「婿と婿養子の違い」についての解説です。

 まず、「婿」と「婿養子」という言葉は、現代においてあまり違いはないようにとらえられているかと思います(そもそも「婿」という言葉自体、旧家督制度の言葉ですので、現在では使われる機会がほとんどないと思いますが)。

 ただし、現代の民法に照らして法律的に分析すると、両者には大きな違いがあります。

 まず、「婿」とは、婚姻に際して妻の氏(姓)を名乗る夫をいいます。

 他方で、「婿養子」とは、「婿」であるのと同時に妻の両親と「養子縁組」を行った夫のことをいいます(現行法上の用語ではありませんが、戦前の旧民法には婿養子に関する規定がありました。)。

 ちなみに、養子は養親の氏を名乗るのが原則ですが(民法810条本文)、妻の氏と養親の氏とが異なるような例外的な場合では、「婿養子」である夫は、妻の氏を名乗ることになります(同条但し書き)。

 そして、養子縁組を行うことは、養子に実子と同様の法的地位を与えるという効力(民法809条)により、相続権(民法887条)や扶養義務(民法730条)などの権利義務関係を発生させます。その意味で、「婿」と「婿養子」には法的に大きな違いがあるといえます。

 この「婿養子」というもの自体は、妻の親から妻の夫へ事業を円滑に承継したいような場合には、なお活用の余地のあるものかもしれません。 とはいえ、現代では夫が妻の姓を名乗ることは珍しいことではなく、事業承継も遺言などによって対応可能ですから、これらの「婿」や「婿養子」といった概念は、さらに廃れていくものだと考えられます。

 ちなみに、国民的な漫画・アニメである「サザエさん」に登場するマスオさんは、サザエさんと婚姻後も自身の「ふぐた」という夫側の氏を名乗っていますし、サザエさんの父である波平さんと養子縁組しているという事情もなさそうですから、単に妻側の親族と同居しているだけで、「婿」でも「婿養子」でもないと考えられます。

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