飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「所有者不明土地管理制度」についての解説です。
令和3年4月21日に行われた民法より、令和5年4月1日から、所有者不明土地管理制度が施行されました。
所有者不明土地とは、相続登記が行われていないこと等により、不動産登記簿上、所有者が直ちに判明しない土地や所有者が判明してもその所在が不明で連絡が付かない土地のことをいいます。
この所有者不明土地は、土地の所有者を探すのに多大な時間と費用を要することになり、売買などの民間取引や公共事業の阻害要因となるなど、様々な問題が生じていました。
この点、改正前の民法においても、管理する人がいない不動産について、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)の財産を管理する不在者財産管理人の選任(旧民法25条から29条)や相続人の存在、不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれます。)に、被相続人の財産を管理する相続財産管理人(旧民法952条)を選任する制度がありました。
もっとも、上記制度は、未登記等で所有者が全く不明な場合に対応できないという欠点がありました。
そこで、上記問題を解消するために創設されたのが、所有者不明土地管理制度になります。
所有者不明土地管理人は、調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地について、利害関係人が土地所在地を管轄する地方裁判所に、「所有者不明土地管理命令」を申し立てることによって、裁判所がその土地の管理を行う管理人を選任します(改正民法264条の2第1項、4項)。
なお、管理人には、事案に応じて、弁護士・司法書士・土地家屋調査士等のふさわしい者が選任されます。
そして、所有者不明土地管理人が選任されると、当該土地の管理処分権は、所有者不明土地管理人に専属する上(改正民法264条の3第1項)、裁判所の許可を得れば、当該土地の所有者の同意がなくても、当該土地を売却することが出来ます(改正民法264条の3第2項)。
そのため、民間事業や公共事業において、所有者不明土地の購入を希望する者が同制度の申立てを行い、所有者不明土地管理人から購入することによって、所有者不明土地に生ずる問題を解消することができます。