飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による訴訟での和解手続(和解調書の送達申請)の解説です。
裁判(訴訟)が始まっても、判決で終わることよりも、和解で終わることの方がはるかに多いという印象を持っています。
訴訟上の和解が成立すると、和解条項の内容確認の後で、「和解調書の送達申請」という手続を行います。一瞬のことなので、もはや気にも留めないのですが、「じゃあ、送達申請は口頭で」と言ったり、裁判官や書記官から「送達申請は口頭でいいですね」などと確認されて「はい」と答えたら、それで終了です。
条文上は、和解調書の送達については民事訴訟法に規定がないことから、自動的に送達されるわけではないこと、民事訴訟規則1条により送達申請は口頭でできることが根拠になります。
なお、2015年6月に「民事訴訟規則の一部を改正する規則」が制定、公布されています。同規則の33条の2では、訴訟記録の正本等の交付については「書面」ですることと規定されましたが、判例タイムズ1417号6頁よれば、「和解調書正本の送達申請については本条の適用はなく、従前通り、口頭で行うことが可能」とされています。
以上のように、まったくもって大した手続ではないのですが、「送達申請は口頭でいいですね」などと聞かれたときに、うっかり「持ち帰って検討します(不測の事態が発生したときの弁護士の口癖のようなフレーズ)」と言ってしまうと、裁判官、書記官、相手方代理人が啞然とすることになるので、注意が必要です。
ところで、先日、第1審ではこちらが訴訟提起して、相手が別訴提起、こちらの全部勝訴判決に対して相手から控訴され控訴審で和解という裁判がありました。この場合、第1審で最初に訴訟を提起したこちらが送達申請するのか、あるいは、控訴提起した相手が送達申請するのか、どっちかなと思ったのですが、書記官の勧めにより控訴提起した相手が送達申請をしていました。