飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「建物の賃貸借契約」についての解説です。
「賃貸借契約」というと、社会生活で売買契約と同じくらいによく耳にする契約であるといっても過言ではないと思います。そのおなじみの賃貸借契約ですが、実は、土地や建物の不動産の賃貸借契約と、その他のものの賃貸借契約とは、契約の継続・更新に関して、借主(賃借人)と貸主(賃貸人)との関係に、大きな違いがあります。
まず、賃貸借契約は、民法601条以下に規定されています。その中には、契約の更新拒絶について特に制限はされていませんから、賃借人は、特定の場合(賃貸借の期限が定められている場合など)を除き、賃貸人から返還請求がされた場合には、これに応じなければなりません。
他方、建物を目的物とした賃貸借に関しては、特別法である借地借家法の適用を受けます。借地借家法において、賃貸人から賃借人への解約請求は、「正当な理由」がない限りできないと定め(27条)、これに違反する賃借人に不利な契約部分を無効としています(30条)。つまり、建物の賃貸借において、貸主からの更新拒絶は、基本的には許されないということです。
なぜこのような違いがあるのかというと、住宅や店舗等の建物は、その人の社会生活の基盤ですから、これが一方的に奪われることのないよう保護する必要性があるからです。
ただし、建物の賃貸借においても、契約期間満了にともなう更新拒絶を予め定めておくことで、賃貸人側からの更新拒絶が可能となります。
原則は、先に説明したとおり、賃貸人不利、賃借人有利の形で行われている建物賃貸借契約で、これを普通建物賃貸借契約といいます。
他方で、例外的に、賃貸人からも契約の更新を拒絶できるように契約しておくこともできます。これを定期賃貸借契約といいます。
建物の定期賃貸借契約は、借地借家法38条以下に定められていますが、その要件は厳しくなっています。まず①賃貸借契約そのものを、書面によって行う必要があります(38条1項)。次に②契約の期間満了後に更新がないことを、賃貸人が賃借人に対し、契約の前に、書面を交付したうえで、十分に説明する必要があります(38条2項)。そして、③契約満了の1年前から6か月前までの間に、賃貸人から賃借人に対して、期間満了に伴って、賃貸借契約が終了することを通知する必要があります(38条4項)。
以上のような手続きを経て、ようやく建物の賃貸人は、賃借人に対して、契約の終了を主張することができるのです。