飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「不動産賃貸借の仲介手数料」についての解説です。
令和2年1月に、不動産賃貸借の仲介手数料に関して、東京高裁で興味深い判決がなされましたのでご紹介いたします。
この事件は、賃貸住宅を借り受けた賃借人が、その仲介を行った不動産仲介業者に対して、支払った仲介手数料の一部を返還することを求めたというものです。
第1審の東京簡裁は、原告の請求を棄却したものの、2審の東京地裁では逆転勝訴、そして、令和2年1月14日、上告審にあたる東京高裁において、原告の勝訴が確定しました。
この点、宅地建物取引業法(宅建業法)において、宅建業者が仲介に関し受けることのできる報酬の額は国土交通大臣が定めることとされ(46条1項)、宅建業者その額をこえて報酬を受けてはならないとされています(同2項)。そして、国土交通大臣は、この報酬の額を告示するものとされています(同3項)。
同規定に基づいて制定されている告示において、賃借の媒介に関して仲介業者が当事者から受け取ることのできる手数料は、最大で家賃1ヶ月分の1.1倍までの金額とされています。また依頼者から受け取ることのできる手数料は事前に「依頼者の承諾を得ている場合」を除き家賃1ヶ月分の約0.55倍までの金額が上限となっています(令和元年8月30日国土交通省告示第493号の第四)。つまり、依頼者が支払う仲介手数料の上限は、原則は家賃の約0.5か月分の金額、承諾がある場合のみ例外として家賃約1ヶ月分の金額です。
そして、前述の2審の東京地方裁判所は、仲介契約を締結する前の段階において、上記の事前の「依頼者の承諾」がないと認定し、原則どおりに家賃約0.5か月分を超える部分の仲介手数料について、仲介業者からの返還を認めました。
この点、現実では、仲介業者との間で仲介契約を締結するよりも前に、仲介手数料を家賃の約1ヶ月分とする明確な承諾を賃借人が行っているケースはむしろ稀ではないでしょうか。通常は、依頼者は仲介業者に言われるままに家賃の約1ヶ月分の仲介手数料を支払っていることがほとんどだと思います。
今後、過払いの手数料の返還請求や、仲介業者の対応変化など、不動産仲介業に影響を与えることになるかもしれません。