飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「未成年と訴訟費用負担」についての解説です(訴訟費用についての概説はこちらをご参照ください)。
平成30年9月11日、仙台地裁で注目の判決が出されました。
この事件を簡単に説明すると、過去に両親と当時4歳の子A(実際に訴訟を提起したのは親権者代理人として両親)の3人が提起し、最高裁まで争った末に敗訴した一連の訴訟に生じた訴訟費用を、国が18歳となったAに対して請求したという訴訟費用支払請求事件です。
これについて裁判所は、当時の訴訟費用の一部である約90万円の支払いを認めました。 なお、本件のAとその両親による訴訟では「訴訟救助」(民事訴訟法82条)という制度によって、訴訟費用の支払いが猶予されていました。つまり、訴訟費用を裁判所(=国)が一時的に立て替えたということですから、国が債権者となっています。
では、このように特殊な事案でも、その訴訟費用負担を命じることは、妥当性があるのでしょうか。
この点、訴訟費用の敗訴者負担原則などの法律の規定からすると、敗訴当時に未成年であったとしても(親権者が代理していたとしても)訴訟の当事者となっていた以上は、訴訟費用の負担が生じるのも仕方がない、という結論になります。
しかしながら他方で、当時4歳だった子を親が代理して提起した訴訟の費用について、国が裁判所を通じて請求するというのは、半ば訴訟を強行されたような立場であった子には酷なこととも思えます。
ちなみに、訴訟費用自体をめぐって裁判になるケースは極めて珍しいと思います。 今回このような事例が生じたのは、「訴訟救助」の制度利用によって国が訴訟費用の債権者になったこと、金額が小さいとはいえなかったこと、放置すれば10年間の消滅時効にかかるおそれがあったこと等が原因であると考えられます。
このような特殊な事例において、破産などを除いて国が免除できるという制度は今のところ存在しませんから、本件のようなケースでどのように対応していくべきかは検討の必要があります。