飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「民事執行法改正による情報取得手続きの新設」についての解説です。
令和元年5月に、民事執行法が改正されました。施行は改正から1年以内となっています。改正されたポイントは複数ありますが、今回は「第三者からの情報取得手続」について説明します。
確定判決などによって債務名義を取得した債権者は、債務者が任意に支払いに応じない場合には、その債権を満足させるために差し押さえ(強制執行)を行えますが、そのためには前段階として、債務者の預貯金や不動産などの財産状況を調査する必要があります。
いままでは、預貯金の場合、弁護士による23条照会などを活用して自力で探すか、財産開示手続(旧民事執行法197条以下)などを利用して債務者から聞きだす方法がありませんでした。しかし、これらは労力がかかり、空振りに終わることもあって、確実性に乏しいものでした。
この点につき、今回の改正によって新たに債務者の①預貯金、株式等の有価証券②不動産についての各資産の情報を保有している機関から、裁判所を通じて情報を取得できるようになります(新205条、207条)。さらに、債権が養育費や、生命・身体に対する損害によって生じたものである場合③給与(勤務先)に関する情報も取得できます(新206条)。
この法改正によって、従前の方法よりもより簡易かつ確実な情報取得が実現する期待が高まります。また、養育費の未払いのケースでは、相手に転職されるとその後の養育費の請求が困難となるケースも多いですから、③の制度は特にこれから一定の効力を発揮していくものと考えられます。
なお、養育費を請求する場合でも、以上の情報取得手続きは、口頭や単なる書面での合意に過ぎない場合には活用できませんから、養育費の取り決めの際には注意が必要です。