令和4年6月13日に改正刑法が成立し、この改正により、保護観察付執行猶予中であっても、1度に限り、再度の執行猶予の言い渡しができるようになりました。なお、この改正は、令和7年6月1日より、施行されます。
保護観察付執行猶予とは、刑の執行が猶予される期間中、保護観察が付される措置です(現行刑法25条の2第1項)。
保護観察とは、保護観察所のもとで、遵守事項を守るよう指導監督し、また、保護観察対象者に住居や仕事を確保させて、自立した生活を営めるように生活環境などについて援護をするものです。
この保護観察は、①再度の執行猶予(再度の執行猶予については、当ブログをご覧ください。)の場合、必ず付けられます(改正前刑法25条の2第1項)。また、②初めての執行猶予であっても、保護観察に付することが被告人の更生や再犯防止の観点から適当と考えられる場合には、裁判所の裁量により、保護観察が付けられることもあります(現行刑法25条の2第1項)。
改正前は、保護観察付執行猶予中に再び罪を犯した場合、上記①と②のいずれでも、執行猶予を言い渡すことはできません(現行刑法25条2項)。
この点、今回の改正により、再度の執行猶予(2回目の執行猶予)を付す場合に限り(上記②の場合)、保護観察付執行猶予期間中に再び罪を犯した場合であっても、執行猶予を付すことができるようになります(改正刑法25条2項)。
なお、保護観察が付いた再度の執行猶予(2回目)期間中に、再び罪を犯した場合には、執行猶予(3回目)は付されません。
現刑法第25条
「次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。」
改正刑法第25条2項
「2 前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の執行を猶予された者が二年以下の拘禁刑の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、この項本文の規定により刑の全部の執行を猶予されて、次条第一項の規定により規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者を犯した者については、この限りでない。」