飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「改正刑事訴訟法」についての解説です。
日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン氏が、保釈中に、レバノンへ逃亡した件は、皆さまのご記憶にも残っているかと思います。
このゴーン氏の逃亡がきっかけとなり、保釈中の被告人の逃亡を防ぐための新制度を盛り込んだ改正刑事訴訟法が、令和5年5月10日に、参議院本会議で可決されています。
保釈された被告人等の逃亡防止等を図るために必要な主な法整備は以下のとおりです。
1 GPS端末による位置情報の把握に関する規定の新設
裁判所は、保釈を許す場合において、被告人が国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときは、被告人に対し、GPS端末を身体に装着することを命ずることができます。
そして、裁判所は、被告人に対して、空港周辺など立ち入りを禁じる区域を指定することができます。
この点、被告人がGPS端末を外したり、裁判所が立ち入りを禁止した区域に侵入したりした場合には、位置情報を検知して身柄を拘束し、1年以下の拘禁刑(懲役・禁錮に代わる刑)を科すことになります。
2 公判日に出頭しない場合の罰則規定の新設
保釈中の被告人が、公判日に、公判に出頭しない場合、2年以下の拘禁刑に処することができる規定が新設されます。
3 裁判所が被告人の生活状況を監督する「監督者」を選任できる規定の新設
裁判所は、必要と認める場合に、監督者の同意の下、被告人を監督する「監督者」を選任することができるようになります。
この点、「監督者」は、裁判所が命じた場合、①被告人と共に公判に出頭すること、②被告人の生活状況等を報告することについて、監督義務を負うことになります。