制裁裁判

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「制裁裁判」についての解説です。

 刑事裁判中、傍聴席で騒いでいる人がいたとき、TVドラマでは、裁判官が「傍聴席の方は、静粛に」と言う姿を目にすることが多いと思います。

 私も、裁判中の傍聴人の話し声がひどく、裁判官が注意した場面に遭遇したこともあります。

 では、裁判官の注意に従わなかった場合、どうなるか調べてみました。

 刑事裁判に限らず、裁判手続き(民事裁判や審判等)において、その法廷等の秩序維持を乱す行為があり、その行為を止めない場合には、秩序維持のため、その乱したものを拘束することができます(法廷等の秩序維持に関する法律第3条2項)。

 そして、秩序維持を乱した者に対しては、制裁の裁判が行われ、決定で、「二十日以下の監置若しくは三万円以下の過料に処し、又はこれを併科する」ことができます(法廷等の秩序維持に関する法律第2条1項、3条1項、4条1項)。

 そのため、法廷等において、裁判官の「静粛に」に従わず、騒ぎ続けた場合、一定のペナルティーが科される可能性があります。

法廷等の秩序維持に関する法律

(制裁)

第2条 

裁判所又は裁判官(以下「裁判所」という。)が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は、二十日以下の監置若しくは三万円以下の過料に処し、又はこれを併科する

2 監置は、監置場に留置する。」

(事件の審判)

第3条 

「前条第一項の規定による制裁は、裁判所が科する。

2 前条第一項にあたる行為があつたときは、裁判所は、その場で直ちに、裁判所職員又は警察官に行為者を拘束させることができる。この場合において、拘束の時から二十四時間以内に監置に処する裁判がなされないときは、裁判所は、直ちにその拘束を解かなければならない。」

(裁判)

第4条 

制裁を科する裁判は、決定でする。

2 前項の裁判は、第二条第一項にあたる行為が終つた時から一箇月を経過した後は、することができない。

3 裁判所は、裁判をするについて必要があるときは、証人尋問その他の証拠調べをすることができる。この場合においては、その性質に反しない限り、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)による証拠調べの場合の例による。

4 制裁を科する裁判をしたときは、手続に要した費用の全部又は一部を本人に負担させることができる。」

 なお、この制裁裁判は実際に行われている事例もあり、直近では、以下の事例がありました。

 令和5年5月30日、大阪地裁で、刑事裁判の開廷直前に、弁護人がICレコーダーを机上に置いた際に、裁判官から録音の有無を問われ、弁護士が「答えない」「録音することで何の秩序が乱れるのか」などと答え、裁判官との応報が続き、裁判官が、複数回の退廷命令を行いました。

 これに対し、さらに、弁護人が秩序を乱した理由を裁判官に聞いたところ、裁判官は「法廷警察権を執行します」と宣言し、「抵抗したら拘束しますよ」と伝えたところ、弁護人が退廷を拒絶し、その場に留まったため、職員3人に連行されたとのことです。

 そして、法廷等の秩序維持に関する法律41項に基づき、その日の午後から、制裁裁判が行われ、その弁護人に対しては、過料3万円が言い渡されています。

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