令和4年6月13日に改正刑法が成立し、この改正により、侮辱罪(刑法231条)の法定刑が引き上げられました。なお、侮辱罪の改正については、同年7月7日より、施行されています。
これまで、侮辱罪の法定刑は「拘留又は科料」でしたが、改正により、「一年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられました。
この改正の理由としては、「近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情等に鑑み、侮辱罪の法定刑を引き上げる日知用がある」ことが挙げられています。
この改正により、従前と比べて以下の点に違いがでます。
①侮辱罪については、教唆犯及び幇助犯は、これまで処罰することができませんでしたが(刑法64条)、法定刑の引き上げにより、処罰することが可能となります。
刑法64条
「拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。」
②逮捕状による逮捕については、これまで、被疑者が定まった住所を有していない場合又は正当な理由なく出頭の求めに応じない場合に限り、逮捕することができましたが(刑事訴訟法197条1項ただし書)、法定刑の引き上げにより、その制限がなくなります。
そのため、警察からの事前連絡もなく、ある日突然、警察官が被疑者宅に訪れ、令状を提示し、被疑者を逮捕することが可能となります。
刑事訴訟199条1項
「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。」
③公訴時効期間は、これまで1年でしたが、法定刑の引き上げにより、3年となります(刑事訴訟法250条2項6号、7号)
刑事訴訟法250条2項
「時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
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六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年」