「覚せい剤」と「覚醒剤」

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による『「覚せい剤」と「覚醒剤」』についての解説です。

 2020年3月31日まで、薬物事件に関する裁判や報道等では、「覚せい剤」と「覚醒剤」の言葉が混在していました。

 この点、同じ薬物の表記を統一するため、2019年に、「覚せい剤取締法」を「覚醒剤取締法」とし、「覚せい剤」の表記を「覚醒剤」に改める法改正が行われました。

 なぜ、「覚せい剤」と「覚醒剤」が混在していたかについてご説明します。

 覚醒剤の「醒」の漢字は、2010年11月30日の常用漢字表の改定により、常用漢字として、常用漢字表に追加されました。

 そのため、両者は同じ薬物のことを示していたのですが、この改定が行われるまで、『覚醒剤』という言葉を法令や公文書などに使えませんでした。

 例えば、「覚せい剤取締法」という法律がありました。この法律は昭和26年に成立したものなので、その当時の常用漢字表からすると、「覚せい取締法」と表記しなければならなかったのです。

 しかし、2010年11月30日の常用漢字表の改定が行われても、法令名は改正が行われることはなかったため、「覚せい剤取締法」等の法律は、そのままでした。

 そのため、報道においては、被疑者・被告人の罪名については「覚せい剤取締法違反」とし、所持や使用していた薬物については「覚醒剤」と使い分けていたことにより、「覚せい剤」と「覚醒剤」の言葉が混在していたのです。

 なお、2019年の法改正により、施行日である2020年4月1日以降の覚醒剤に関する犯行については、「覚醒剤取締法違反」等に統一されることになりましたが、これ以前の犯行については「覚醒剤取締法違反」ではなく「覚せい剤取締法違反」となります。

 この点、2020年4月1日以前の覚せい剤の使用について、2020年4月1日以降に判決が下された場合、その判決の理由には、『被告人は「覚醒剤」・・・グラムを・・・の方法で使用しており、当該行為は「覚せい剤取締法」・・・条に該当する』と、「覚せい剤」と「覚醒剤」の言葉が混在することがあります。

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