飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「退職者の雇用保険の資格喪失届等をハローワークに提出しなかった場合」についての解説です。
会社等と雇用契約を締結していた場合、事業主等の届出により、労働者は雇用保険に加入します。また、労働者が退職等をした場合、事業主はその労働者が被保険者でなくなったことの届出を、ハローワークなどに提出しなければなりません(雇用保険法7条)。
この点、労働者が退職等を行った際の上記届出が行われなかった場合、元労働者は、失業給付が受けられない等の様々な不利益を負うことになります。
そのため、上記届出義務に違反した事業主には、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の罰則が科されます(雇用保険法83条)。
しかしながら、多忙等を原因として、上記届出義務違反について、退職者が刑事告発しないことが多いことから、事業主に刑事罰が科されることはほとんどありませんでした。
この点、2023年3月31日付で、福岡市にある運送会社の事業主が、被保険者に関する届出を行わなかったとして(雇用保険法7条違反)、略式起訴されています。
そのため、今後は、上記届出義務に違反した事業主に対する刑事処分が行われる事案が増加するものと思われます。
(被保険者に関する届出)
第7条
「事業主(徴収法第八条第一項又は第二項の規定により元請負人が事業主とされる場合にあつては、当該事業に係る労働者のうち元請負人が雇用する労働者以外の労働者については、当該労働者を雇用する下請負人。以下同じ。)は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する労働者に関し、当該事業主の行う適用事業(同条第一項又は第二項の規定により数次の請負によつて行われる事業が一の事業とみなされる場合にあつては、当該事業に係る労働者のうち元請負人が雇用する労働者以外の労働者については、当該請負に係るそれぞれの事業。以下同じ。)に係る被保険者となつたこと、当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなつたことその他厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。当該事業主から徴収法第三十三条第一項の委託を受けて同項に規定する労働保険事務の一部として前段の届出に関する事務を処理する同条第三項に規定する労働保険事務組合(以下「労働保険事務組合」という。)についても、同様とする。」
第83条
「事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合
二...」