飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「薬機法における化粧品に関する広告の規制」についての解説です。
先日、ブログ等に掲載する広告について、ご相談がありました。その際、化粧品やダイエットサプリの広告の薬事法上の取扱いについて、気になったので、今回調べることにしました。
2014年に、薬事法の改正が行われ、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に名称を変更し、内容も一部改正されました。
【薬機法の目的】
この薬機法は、以下の3点を主たる目的としています(薬機法1条)。
1 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質・有効性・安全性の確保と、これらの使用による保健衛生上の危害の発生・拡大の防止
2 指定薬物の規制
3 医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進
【規制の対象】
そして、薬機法が規制する主要な対象物は、①医薬品(薬機法2条1項)、②医薬部外品(薬機法2条2項)、③化粧品(薬機法2条3項)、④医療機器(薬機法2条4項)です。
このうち、特に注意が必要なものとしては、日常生活において最も身近なものである対象物である「化粧品」です。
薬機法上、化粧品は、薬機法2条3項より、以下のとおり、定義されています。
第2条3項
「この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。」
この定義に該当するものは幅広く、ファンデーションやアイシャドウといったメイクアップ商品だけではなく、シャンプーやリンス等も「化粧品」に該当します。
【広告の規制】
ネットショップで「化粧品」を扱う場合や「化粧品」の広告を行う場合、薬機法による規制の対象となります。
そして、特に重要なものとしては、サイト、ブログ、SNS等での商品に関する広告の方法です。
広告の方法としては、薬機法上、以下の規制があります(薬機法66条)。
第66条(誇大広告の禁止)
「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。」
この点、特に注意しなければならないことは、広告主が「何人も」となっていることです。条文上、「何人も」と広告主が特定されていないことから、広告主は製造業者や販売業者だけを指すのではなく、広告を掲載するメディアや広告代理店のほか、アフィリエイター・ライターも規制対象となることに注意が必要です。
なお、広告における表現の基準としては、厚生労働省の局長通知として「医薬品等適正広告基準」がありますので、「化粧品」の広告を行う際には、基準内容を確認する必要があります。
【罰則】
そして、上記広告規制に違反すると、懲役や罰金の処罰(薬機法85条4号)、あるいは、課徴金納付命令(薬機法75条の5の2第1項)を受ける可能性があります。
第75条の5の2第1項
「第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。」
第85条
「次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 ・・・
四 第六十六条第一項又は第三項の規定に違反した者」