飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による『テレビドラマの世界と現実の実務の違い』についての解説です。
弁護士が主人公となったテレビドラマについては、これまでに多数作られていますが、当然のことながら現実の実務とは大きく異なります(あくまでフィクションですから。)。
まず、弁護士は1つの事件について集中的に取り組むということはありません。当職の合、同時に100件以上を並行して進めていますから、1日のうちでも何件もの事件について何らかのアクションを起こしています。
したがって、テレビドラマのように、遠方まで出かけていって、あるかないかわからないような証拠を探すなどという悠長なことをしている時間的余裕はありません。
ときどき、複数の弁護士が(下手すると事務所ぐるみで)1つの事件に関わるなんて場面が描かれますが、同様の理由により、あり得ません。
また、テレビドラマの中では弁護士費用のやり取りについて思い切り省略されていますが、通常は、弁護士が無償でほとんど趣味のように仕事をすることなどありません。もちろん、弁護士費用についての保険の利用や法テラスの利用により弁護士費用の負担を減らすことはできます。
一方、テレビドラマの中では、弁護士が正義のためであれば無償で事件に取り組んでいるように描かれていますが、これは誤解を招く表現だと思います。各人の金銭感覚にもよりますが、弁護士への依頼により「かなりの金額」が動いている印象をもっています(それなりに経費もかかっているので...)。
そして、法廷で尋問をご覧になった方はご存じかもしれませんが、民事事件、刑事事件を問わず、「異議あり!」と大声で叫んだりすることはあまりないと思います。当職の場合は、よほど問題があるときに「異議」と言って異議を出すことがごくまれにありますが(特に民事訴訟で。)、とりたてて大声を出すわけではありませんし、異議を連発する弁護士は見たことがありません。
また、連続ドラマで奇妙に映るのは、弁護士が全然異なるいろいろな種類の事件に取り組んでいることです。毎回同じような話だとつまらないのはわかりますが、現実には、弁護士は、ある程度の専門性を持っているものと思います。企業法務をしながら離婚事件や刑事事件、消費者事件や医療過誤までこなすなんてことは現実には困難です(できている先生もおられるかもしれませんが、当職には無理です。)。
例えるなら、小児科の医師が時々脳の外科手術をしつつ、ついでに麻酔科医までこなしながら、新薬の開発研究までしている...という感じです。
ですから、弁護士に事件を依頼するときは、当該弁護士がその分野の事件について重点的に取り組んでいる分野かどうかというのは結構大事だと思います。