飯塚市の小島法律事務所から弁護士による「財政再生団体」についての解説です。
令和元年の9月、福岡県の田川市は、市の将来にわたる財政見通しを明らかにしました。
それによると、田川市の平成30年度の財政は、実質収支は6億円を超える黒字になっているものの、財政調整基金(年度間の財源不足に備えるために余剰金等を積み立てたもの)などの取り崩し額を差し引くと、およそ10年ぶりに赤字となっています。最悪の場合、2023年度には財政調整基金の残高が枯渇し、26年度には財政再生基準を超過して、「財政再生団体」になる可能性もあるとの報道もされています。
この「財政再生団体」とは、要するに「財政再生基準」を超過して、財政破綻した地方公共団体のことをさします。令和元年9月現在、この「財政再生団体」に指定されているのは、北海道の夕張市のみです。
この点、地方公共団体の財政破綻については、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(以下、「健全化法」といいます)に規定されています。非常に複雑なので、概要だけ以下で説明します。
健全化法によると、地方公共団体が「財政再生団体」に指定される前に、前段階の手続きが用意されています。
まず、地方公共団体の財政が「早期健全化基準」(前述の「財政再生基準」よりも一段階厳しい基準です)の4つの基準のうち1つでも上回ってしまうと、その地方公共団体は「早期健全化計画」を策定する必要が生じます(健全化法4条1項本文)。この計画が策定された場合、総務大臣に報告され、公表されることとなります。これはいわば黄色信号といえます(この計画が策定された地方公共団体は「財政健全化団体」ともいわれます)。
ちなみに、福岡県内では、平成29年度時点で、この早期健全化基準を上回った市町村はありません。
そして、早期健全化計画策定にもかかわらず、さらに「財政再生基準」をも超過してしまった場合には、その地方公共団体は「財政再生計画」を議決し、総務大臣に報告し、公表しなければなりません(健全化法8条1項本文、9条1項、2項)。これによって「財政再生団体」となり、いわば赤信号の状態になるのです。
こうなると、計画に総務大臣の同意がある場合を除いて、地方債の発行などができなくなります。 地方債の発行が停止・制限されるとなると、その財政は非常に厳しくなり、行政サービスも限界まで抑制されることになりますから、実質的にその地方公共団体は、財政破綻したと評価されるのです。